素直な感謝と自分に都合がいい感謝と意味のない感謝

日々のこと,脱モラハラ偽りの感謝,感謝のからくり

奴に感謝し
置かれた環境に感謝し

全てを肯定して生きた私が
唯一否定したのは私自身

ここで生きていくのに邪魔な存在だった

いつのまにか実体はなくなり
幸せの意味も分からないまま

それでもなお

見せかけの私は不幸せな私以外の

全てのものに感謝し
全てを肯定して

身の上に起きていること
全てに意味があると盲目的に信じて

奴の人生を生きてきた

だから
辿り着いた「今」は奇跡のよう

いま私は

元旦早々里山を歩き
温泉に浸かりながら奴へ感謝する

罪悪感もなく
自分に都合がいいからこその感謝

そこには
優しさも思いやりもない

奴の気持ちが分かったような気がした

理解し難かった
奴の感謝の言葉のからくり

奴の特殊な内的世界

今さらと思うけど
文字にして整理しようと思う

夢のような現実ばなれした一日に感謝

強い寒波到来の年末年始
初日の出登山を諦める選択肢はなかった

友だちと歩く夜中の登山道の暗闇は
想像以上に真っ暗闇で恐ろしく

それは先頭も
移動してみた後尾も変わらないから
明かりだけを必死に見て歩く

凍てつく暗い山頂はマイナス6℃
星と三日月と夜景が
澄んだ暗闇の中で輝いている

目を凝らしても地平線は見えない

指先に出てきたレイノー現象に
持病を改めて突きつけられ不安がよぎる

寒さに震え小刻みに体をゆすり
その時をひたすら待つ

太陽はまだ
地平線のずっと下の方でも

真っ黒な空が紺碧に変わり始めれば
星も月も夜景も輝きは薄れ

そして地平線が輝き始める

地平線の近くにあった三日月は
いつの間にか紺碧の夜空に浮かんでいる

もうすぐ夜が終わる

紺碧の夜から
朝に近い地平線までの
グラデーション

夜と朝の境目の
幻想的な空の色は刻々と変わり

言葉で表現はできない
壮大な空のショー

寒さに凍え体を揺らしながらも
目を離すことはしない

紺碧の空は青みが強くなり
地平線のオレンジ色が濃くなってきた

光り輝く赤のようなオレンジ色
日の出前の魔法のような空の色

目を凝らし息をのむ
今か今かと待つ

地平線からやっと顔を出し始めた太陽

あたり一面オレンジ色に包まれ
オレンジ色に染まっていく

連なる山々も朝の光に照らされて
さっきまでの暗闇は
もう想像することができない

太陽の大きさと眩しさと温かさと
神々しさに

思いもよらず涙がこぼれる
感動が涙になって胸がつまる

このシチュエーションにふさわしすぎる
自然な涙はそのままに

オレンジ色から水色そして碧色の
明るい空のグラデーションは

新年の始まりだ

思い出に写真を撮り合えば
凍てつく寒さが勝ってくるから

昇る太陽をゆっくりと
心ゆくまで観賞する余裕はなく
急いで山を下り始めた

眩しい朝日の中
里山を歩いていることの感動

夢のよう

何度も太陽を確認するのは
いつもの太陽と違って見えるから

見たことない大きさと光の中
経験したことのない一分一秒を
噛みしめる

奴への感謝は私の都合

下山して
麓の温泉で冷えた体を温める

露天風呂から眺めている
濃い青一色の空が

殺風景に見えてくるのが残念で

それが不可解で
しばらく考えていた

濃すぎる青一色の空は不自然だとか
贅沢過ぎる青なんだとか

殺風景で穏やかな空と空気と温泉と
そして充足感に包まれ

この上ない新年を迎えていることの
不思議な感覚

朝日の中を歩いた里山
朝日の中で温まる温泉

夢のような
現実ばなれした元旦

またとない今日
自分のための一日

自由で心穏やかで

奴にまで自然に感謝していた


それを奇妙に思うけど


そこに
優しさとか労わりとかまるでない

私に都合がいいから感謝もする
それだけだった


感謝の言葉を軽く口にする
奴の気持ちが少し分かった気がした

奴の感謝の言葉のからくり

奴は
都合よく感謝の言葉を使い私を労う
その言葉に素直に甘えた私を罵倒する

私は
感謝されるから頑張り続ける
怒鳴られないように頑張り続ける

甘えるのが許されない無慈悲さと
頑張り続ければ感謝される無慈悲さ

感じていた奴の感謝の言葉の違和感
私を罵倒する奴の目の違和感

感謝の言葉に意味はなく
ましてやそこに

優しさとか労わりとか
申し訳ない気持ちとかまるでない

共感力の欠片もない

もちろん感謝はない

憎悪しかない

「俺はお前に感謝している
だからお前は
俺のために頑張り続けろ」

「俺はお前に感謝している
だからお前は
いい気になって甘えんじゃねーぞ」

それだけだ



特殊な奴の内的世界

理解し難かった感謝の言葉のからくり

温泉に浸かりながら
罪悪感もなく痛感した奴のそれ

自分に都合がいいからこその感謝
都合が悪ければ怒鳴ればいいだけ

単純なことだった

今さらだけど。