紅葉と落葉、不要な葉を捨てるのは生きるための営み
女遊びをする夫と眠れない私と
眠たいけど眠れない
時計は夜中の3時を指している
帰ってこない奴のことなど気にもせず
眠れればいいけど眠れない
この状況下で
世間の妻は眠れるのだろうか…とか
私の元気を奪う奴のこととか
元気を奪われる私のこととか
過去とか後悔とか
いろんなことを考えてしまうから
今日の里山歩きの
鮮明な感動の余韻に浸って

心拍数を抑える
平常心を保つ
女遊びをする夫も眠れない私も
客観的に見たらどうでもよくて
心が整うと
この状況はますます私が
幸せにになる方向に向かっていると
そう思える
そして
遠慮なく奴を憎んでいいと
言い聞かせる
落ち葉を踏む音と落ちる葉の音と

秋は好きではなかった
後は散るばかりの鮮やかな紅葉は
切なく映るから
もの寂しく胸がキュッとなる
いつも秋はそうだった
私の中の秋は
そういうものだったはずだ
だけど今
紅葉を追いかけて山を歩く
今日は秩父の里山
澄んだ青空とひんやりとした空気と
落ち葉の匂いが清々しい
カサカサッガサッ
サクサクッシャリッ パリパリッバリッ
落ち葉を踏む音が心地良く楽しい

足を止めると聞こえた乾いた音は
葉が落ちる音
「葉が落ちる音があるんだあ」
懐かしいような
初めて聞くような
カサカサカサっとゆっくり
落ちていく葉を目で追いかけては
静かな森の中に小さく響く
その乾いた音に聞き入る
一人で来て良かったと心から思う
歩いて
落ち葉を踏む音を楽しみ
立ち止まっては
落ちる葉の音を楽しむ
そして
秋色の森の中で不意に出会うもみじは
真っ赤にきらきら光っているから

初めて見たかのように感動する
いちいち感動する

紅葉に落葉
ひんやりとした空気に青い空
そして凛と立つ裸の樹
だけど今年は
もの哀しさや寂しさは
微塵も感じない
そのことが嬉しいと思う
必要な葉と不要な葉と
紅葉と落葉
落葉樹が生きるための仕組み
ポジティブな作業
せっかく茂らせた葉を
秋には惜しげもなく捨てて
太陽光の少ない冬をやり過ごす
不要な葉を付けたまま冬を耐えるより
潔く捨ててダメージを抑え
エネルギーを蓄え
また春に新しい葉を作ればいい
必要な葉は育み
不要な葉はさっさと振るい落とし

凛と裸の枝を広げたまま
冬を乗り切る
それが ”生きる” ための
能動的な落葉樹の営みなら
わたしは落葉樹のように
そうあるべき
女遊びも夜中に帰るのも奴の勝手
それをどう捉えるかは私の問題
それで眠れないのも私の問題
だから
わたしの元気を奪っていく
不要な意識も考えもさっさと捨てて
ただ生きるためにシンプルに
淡々とブレずに居られたら
自然な感情はそのままに
悪びれずに奴を憎めばいい
眠たいけど眠れないから

今日歩いた里山の
鮮明な感動の余韻の中で
心を整える
わたしは
秋の山も大好きだなと思う

きっと冬の山も大好きになる
心が整うと
「好き」が増えたそれだけで
「幸せだな」と思う