笑いながら平和に恨みを晴らす方法
「笑いながら恨みを晴らしたいんだよね」
娘のそんな言葉を思い出している
奴の不倫を
またとない離婚のチャンスと
喜んだのもつかの間で
証拠が撮れ
離婚が現実味を帯びるほど
意に反してやせ細っていく自分に愕然とし
何がどうなっているのか
混乱していく私に
手繰り寄せられるわけもない
娘の言った
「笑いながら恨みを晴らす方法」が
今ははっきりと見えている

生き生きと過ごすこと
奴への最大の復讐は
今のこの環境で
破綻した夫婦の家庭内別居の
この状況下で
主従関係で成り立っていた
夫婦円満の体のあの頃よりも
私が心から笑っていること
楽しんでいること
生き生きとしていること
恨みとか憎しみとか怒りとかに
とらわれて苦しむ私の姿は
きっと奴の喜びでしかない
自分よがりの解釈しかできない奴は
至極当然に
自分への嫉妬と勘違いし
自分のエゴを満たす
愛されていると満足する
ざまーみろとほくそ笑む
私にとって
これほどの屈辱はないし
気持ちが悪いことはないし
割に合わない
どうでもいい奴への
憎しみとか怒りとか仕返しとかの
執着を完全に捨て
生き生きと生活していれば
結果それが
奴への最大の復讐になる

どこを向くかで見える景色が180度変わる
同じ環境でも
どこを向くかで
見える景色が180度変わる
ということを
とうとう知ったから
目を向けるのは奴じゃないって
とうとう気づいたから
目を向けるのは自分の人生って
当たり前の
大事なことを思い出したから
過去を完全に断ち切ってしまえば
喪失感よりも解放感に包まれて
人生のほとんどを費やしたこの場所から
心温まる光射す方を向いている
今までとは違う世界を見ている
奴のただの操り人形だった私が
意思を持って勝手に動き出し
人生を楽しもうとしている
今を楽しんでいる
まっすぐ前を向いている
向いている先に奴はいない
それだけで私は幸せだから
結果それが
奴への最大の復讐になっている

ネガティブな感情も自分の糧にする
奴が吐き捨てる心ない暴言も
幼稚さ丸出しの罵倒も
簡単に許して忘れて
無かったことにした今までとは違う
日々の奴のくだらない言動を
いちいち軽蔑しては私の糧にする
もちろんその感情を奴にぶつけないのは
ぶつける価値もないからで
奴のことはどうでもいいから
だからその感情を
私が前に進むための踏み台にこそすれ
それにとらわれることはない
ネガティブな感情を否定した瞬間に
ネガティブな感情は増大していくから
ネガティブな感情を殺した瞬間に
ポジティブな感情も消えるから
それを痛いほど分かっているから
だから
軽蔑とか憎しみとか怒りとか
悔しさとか哀しさとか
気持ち悪いとか大嫌いとかの
気持ち良くない感情もただの感情として
良し悪しもなく
否定もなく肯定もなく
一過性の
ただの湧いてくる雑念として
止むを得ないとそのままに
心の中で
奴を軽蔑して罵しって
あっという間に私のための糧にする
湧いてくる感情に
振り回されることはない
ご飯も美味しく食べられる
次はどこの山に登ろうか考えられる
人生いろいろあって面白いと思える
結果それが
奴への最大の復讐になっている

奴は奴で楽しんでくれれば私には好都合
家族に相手にされない今の状況も
過去も自らも
省みないのは
奴の勝手だからどうでもよい
そんな能力自体が欠落しているようで
哀れに思うこともあるけれど
それはそれで
余計なお世話だろうし
女の尻を追いかけることを生きがいに
奴は奴で楽しんでくれれば
私には好都合だし
ずっとこのままで
欲望にまかせ
死ぬまで突っ走って欲しいとか
できれば
帰って来ないで欲しいとか
罪悪感も沸かず
そんなことを心から願える
今の私は
笑いながら平和に復讐を果たしている
