小さな一歩から始まって小さな一歩を積み重ねるソロ登山

日々のこと,脱モラハラソロ登山,小さな一歩

やりたいことは
自分で決めて行動する
欲しいものは
自分で決めて手に入れる

それは
やってはいけないこと
だった

すべてが
受け身でなければいけない
主体性も自発性もあってはいけない
決断力も行動力も要らない

それらは
攻撃される対象でしかなかった

潰され捨てさり
そして
すっかり忘れていた

ずいぶん長い期間忘れていた

ことを思い出した

誕生日のお祝いに山に登る

数年前から山に興味はあった
もちろん最初から100%諦めている

登山好きの友だちの話は
全くもって他人事

私が山に登る可能性は
0.01%もないから
羨ましいと思うことすら
身の程知らずに思う

だから全くもって他人事

のはずだった「山に登る」ということ

いつも横目で見ていた
登山靴が並んでいるショーウインドーの
縁のないはずのお店に入った

「いつでも山に登れるように」

山のことは何一つ知らないけど
登山靴は買って置こうと思った
ついでに分厚いウールの靴下も買った

もうすぐ誕生日を迎える
人生のリスタートを切ったのは
一年前の誕生日

この一年間で
ほんの少しでも前に進めたのか…
見方によっては
随分と前に進んだのかも知れない…

どかーんと青い空を見上げると

「明日山に登ろう」

そう思った

とりあえず挑戦

初心者の登る近郊の山を検索
筑波山に決めた
注意事項を読み進めると
少し不安になる
間に合わせでいいと考えていた
必要なものが必要だと思った

登山用品専門店まで自転車で走り
リュックにグローブに
アウターにパンツを買う

万が一のために
行動食非常食を袋に詰め
持ち物にリストアップされていない
モバイルバッテリーは
私にとって必需品

一応のコースを決めたけど
自分の体力も脚筋力も知らないから
(根性は自信あるけど)

参考所要時間はあくまでも参考で
タイムスケジュールは全く組めない

コースを含めいろいろと
その場で変更可能という気楽さで
楽しみたいと思うのは

甘さというか
実感の無さというか

とりあえず挑戦しようと思う

行動したからここにいるソロ初登山

登頂よりも行動したことへの満足感

あっという間に
持ち上げる脚は重くなり
息が荒くなる

まだ始まったばかりなのに…
歩きと登りはやっぱり全然違う…
きつい…しんどい…

足下を見て踏み出す一歩を
どこに踏み出すか
瞬時に選択し瞬時に決断する
その連続は面白い

しっかり踏んで進まないとふらつく
気が抜けない

自分のペースでゆっくりと
一歩づつ
一歩づつ
前に足を出して登っていく

頂上から
関東平野のパノラマを眺めている
自分が不思議だった

縁のなかった山登りだ
ハードルが高いと思っていた山登りだ
はなから諦めていた山登りだ

行動したからここにいるんだと
改めて思う

私・・・
頂上を目指したかったのだろうか?
この景色を見たかったのだろうか?
ここまでして登りたかったのだろうか?
山登りが好きなのだろうか?

また
登りたいと思うのだろうか?

よく分からないけど
「山に登った」というより

「行動したからここにいる」
という

確かな実感のほうが
間違いなく嬉しかった

長いこと忘れていた
自分で決め行動するということ

奴と出会う前の本来の“自分“を
思い出していた

自分で最後まで進むしかない

下山のコースを間違えた

急こう配の険しい岩場が続く

気づいたときは
分岐地点から200m下っていた

後ろを見上げて前を見下ろす

次の目的地点で
食べようと思っていた昼ご飯

200m引き返すかこのまま下山か

もう脚が上がらない
だから
迷わず下山を選択

油断すると滑落しそうな
急斜面と段差の険しさに不安になる

お腹も空いた
少しでも早く下りたかった

ペースが速くなりそのうちに
膝の痛みに顔が歪む

進むしかない
止めることができない
自分で最後まで行くしかない

最期まで“自分“しかいない

「登山ってそういうことなんだ」

自分に言い聞かせながら
登山道の出口にたどり着いた

歩くたびに
膝から崩れ落ちそうな感覚と
激しく膝は痛むから
転ばないように歩くことに集中する

吐きそうだし頭もガンガンしている
それでも
無事に下山できたことにホッとした

最悪のコンディションのまま帰宅し
翌日も吐きそうで気持ちが悪い
翌々日も体調が悪い

“不眠“を山登りを諦める理由にはしない

その一番の原因は分かっている

ステロイドの副作用の不眠のため
眠剤を飲んで30年近い

もう何年も前から
その眠剤が効かない

睡眠を上手く取れないから
体調管理ができない

睡眠不足のまま山に登り
疲れ切っても眠れない

体が疲れれば疲れるほど
眠れなくなる悪循環

これだけは
どうすることもできない
でも
いつかは眠れるから

眠れたら復活する
ことも分かっているから

だからもう
山登りを諦める理由にはしない

小さな一歩を積み重ねる2度目のソロ登山

初登山から2週間後
違うルートで同じ筑波山に登った
前回の失敗を活かし

距離はあってもなだらかなコースで
時間はかかっても自分のペースで
ゆっくりと小さな歩幅で
標識を見落とさない
そして
ケーブルカーで下山する

この行程は
膝を痛めることもなく
焦ることもなく
頂上からのパノラマを
心ゆくまで眺め
ゆっくり昼食を楽しむ
こともできるはずだ

睡眠不足は相変わらずで
朝から体がだるい

「山に登る」ことより
体の不調に意識が向くということは
「山に登る」ことへの余裕ができた
からだと思う

初登山はソロということもあって
緊張していたんだなあと
と思う

よく覚えていないし・・・



登り始めると
すぐに脚が重くなる

振り返ると
見晴らしの良い風景が広がっている
このコースにして良かったと思う

疲れて振り返っては
眼下に広がる景色を楽しむ

なだらかなようだけど
山道は岩場で足場が悪い
前日の雨の影響もある

何度もつま先をひっかけ
転びそうになる

見るからに危ない急斜面の
段差の激しい岩場を登るときは
そんなことは一度もなかったのに

すりむいた手のひらに
絆創膏を貼りながら
気を引き締めなきゃと思う
ちゃんと脚を上げなきゃと思う

前に進むための一歩は
小さな段差を探して登る
その繰返し
選択と決断の連続はやっぱり面白い

頂上近くになると
急こう配のゴツゴツ岩場を這い上がる

小さな一歩から始まって
その小さな一歩を積み重ねて

山のてっぺんに立てる

すごい!って思う

自分で決めて動きさえすれば
諦めていたことも
可能になる

すごい!って思う

いろんな山を登って
そこで見える景色を楽しんで

お気に入りの山とか見つかって
次はどこに登ろうとか

これからも
きっと私は山に登っていく

そんな気がする