心が疲れたときのリセットは闘いのためのリカバリー
だけど
その不甲斐なさに疲れたら
自然を感じたくて土手に行く

大きなため息を
何度も何度も吐き捨てる
不快な思いを
めいっぱい吐き捨てる

最近は歩くよりも自転車で散策がいい
河川敷の雑草の生えた脇道を見つけては
わくわくしながら水辺まで進んで行く

藪の中ではガサガサ音がするから怖いけど
お邪魔しているのはわたしのほう
だから「お邪魔します」と声をかけ
その先の新たな景色に出会う

温かい日差しだったり

かがやく水面だったり

ただ揺れている草花だったり
ひらひら舞う花びらが白い蝶だったり

釣りをしている親子だったり
日がな一日釣り糸を垂らすおじいさんたちは
ペットボトルのお茶を用意してくれていたり
クルミ拾いのおじいさんだったり

教えてもらったクルミを拾ったり
石の上で日向ぼっこをしている
冬のヘビにドキドキしたり
水辺のカニだったり

水面を泳ぐカモの群れだったり

夕陽を眺める蛙だったり

夕陽に背を向ける猫だったり

取るに足らない自然の切れはしが
わたしの空いた部分を
次々に埋めていく
吐き捨てるものを吐き捨てれば
ささやかだけどかけがえのない
そんなもので満たされていく

そして
明日と明後日と次の日と
しばらく私を癒す
今日の断片
枯れたススキと猫じゃらしの束を
自転車のカゴに積んでの帰り道に

小さな薄紅色の冬桜が咲いていたり
優しく頼りなさげに
ゆらゆら揺れている一重の花びらが
春じゃない今が似合っている
と思えたのは
土手の冷たい風を受け揺れていたからで
凛とした
冬桜の意思があるように思えたから
かんたんに飛ばされない
花びらは
今日の終わりにふさわしく
溢れそうな
胸にツンとくる思いは飲み込んで
気持ちを切り替え
引き締める

できれば
満ち足りたこんな日は
このまま
奴の顔を見ないでいたいと思う
やわな気持ちを
引き締め
闘いの場所に戻ろうと思う
奴だけじゃない
ラスボスは私自身だから
凛と背筋を伸ばし
普通の顔をして戻ろうと思う