モラハラ被害者　“自分軸”で考えるということ

サイトを立上げ、前を向き始めたころの外来でのこと。

「どうですか？」
「もう大丈夫です！」

「ご主人は変わらないですか？」

「そういう人なので。
私の気持ちを変えられたので大丈夫です！
時間を無駄にしたと思います。」

「無駄にされたんです！」

「勝手に振り回されていました。」

「ご主人が振り回したんです！」

私は、話がかみ合わないことに戸惑っている。

「でも、自分の気持ちを変えないと落ちたままだから。」

「自分を救い上げるしかないんだろうけど、
鼓舞しすぎると自分が壊れますからね。水を差すようだけど。」

自分を鼓舞しているわけじゃない、先生と何かがかみ合わない。と、感じたまま

「はい、でも大丈夫です！」

カラ元気と思われないように、自然にしっかりと返答した。

先生は実例を挙げ、頑張りすぎないように話している。
私は釈然としないまま聞いた。

身体の調子を聞かれ「酷い下痢が続いた」等、
本来の先生と患者のやり取りをし、診察室を後にした。

私はもう大丈夫、診察室を後にし、歩き出す。

歩き出すと胸が締め付けられた。
溢れそうだ。誰も居なかったら溢れている。

何？この締め付けられる胸の痛みは何？何で？どうして？
私、無理しているってこと？

違う！そんなはずがない。
多くを語らなくても理解してくれる先生の話が解せないから？

私はもう大丈夫！大丈夫！自分で念を押してみる。
そして、やっぱり大丈夫！だ。

それから、なりふり構わず溢れそうになる涙を堪えた。

溢れた感情は理解できないが、私はやっぱり大丈夫！だ。

何度も何度も考えた。
私に同調しない、先生とのかみ合わない会話、
胸を締め付けられたあの感情、
どういうことか理解できないままでいる。

時間を無駄にしたんじゃなく、無駄にされた。
勝手に振り回されたんじゃなく、夫が振り回した。

それじゃ、人のせい…

信頼している先生の言うことの真意を理解したい。

が、出来ない。
私にそういう思考は無いし、それは嫌だった。

それから二ヶ月が過ぎる頃には、夫と喧嘩ができるようになっていた。
上手い切り返しは出来ないが、口答えができる。恐怖が薄らいでいる。

自分の感情を殺すようになってから、意見も主張もしなくなり、
そのうち考えることもしなくなる。全てが無駄だったから。
そして全てが夫軸。自分を反省し責めてばかり。

モラハラ被害者の認識を持ち、
“自分軸”で考えようとしてもなかなか上手くいかない。
というより、それが出来ない。分からない。

自分の為に思い出さないようにしていた過去を見る。
モラ夫の過去の言動、モラ夫の今の言動。
幻想じゃない現実の夫だけを見るようにすると、それが見えてきた。

憎んだ、憎んでいい、憎むべきだ！
夫はそれだけのことをしてきたのだから。
そこから始めると見えてきた。

洗脳され、
自分で自分を追い込むように
マインドコントロールされてきたのが見えてくる。

勝手に洗脳されたんじゃない。
夫は私を洗脳した。そして、

私の“良心”を利用して、
“優しさ”を利用して、
“責任感”を利用して、
“正直さ”を利用して、
“我慢強さ”を利用して、
マインドコントロールしたのだ！

私の“モラル”を利用して
マインドコントロールしたのだ！

夫は自分の為だけに、私が犠牲になることを強要したのだ！

そして今、少しずつだけど、
“自分軸”で考えるということがどういうことか、
思い出してきた。分かってきた。

先生の言わんとしていたことが分かる。
私に同調しなかった意味が分かる。

「時間を無駄にしたんじゃなく、無駄にされた。」
「勝手に振り回されたんじゃなく、夫が振り回した。」

今、そう思う自分が、そう考えられる自分が、
夫のせいにできるようになった自分が嬉しい。

今までのように、そんな自分を反省して責めることはもう無い。

そんな自分が嫌じゃない、好きだ！と、思えるから。

「自分を鼓舞し過ぎるな。」と言う先生の言葉と、

無意識に胸を締め付けたあの感情。
理解しがたいあの感情。

私は自分を殺して生きてきた。。。
いつの間にか“殺された自分”を無意識化している。。。

無意識化していた自分が、私に訴えていたんだと思う。

これから少しずつ、置き去りにし忘れ去られた“自分”を思い出す。

“自分”を反省し責めたりすることは、もうしない。
だから、“自分”を否定し追い込むことも、もう無い。

今、自分が好きだ！と思えるから、
自分を主張し、
建設的でない喧嘩ができる自分が好きだ！と思えるから。

まだ、“大丈夫！”とは言えないが、きっと、“もう大丈夫！”。